今日は、『勘違いが人を動かす 教養としての行動経済学入門』エヴァ・ファン・デン・ブルック (著)を紹介します。
本書は、「認知バイアス」について書かれた本です。
私たちの行動は、思いも寄らない何かに影響されていると本書はいいます。
それは人間の先入観や偏見といった「勘違い」が原因で起こります。
それを「認知バイアス」といいます。
この本では、知っていると役に立つ数多くの「認知バイアス」が71個も紹介されています。
その中から、
わたしが特にビジネスに役立つ「認知バイアス」を15選を紹介します。
1.ダニング=クルーガー効果
ダニング=クルーガー効果は、
「あるテーマについて少しだけ知識がある人は、自らの専門性を過大に評価しやすい」
という認知バイアスです。
たとえば、芸能人が医療について大きな問題点が分かったと、SNSで発信するなどの例があります。
知識が少ない人の方が、その道の専門家よりも自信を持ってしまうということです。
逆に知識が増えるにつれ、自分がまだ何も知らなかったことに気付くのです。
人はつい、自分を過信してしまう傾向があるということです。
2.プラシーボ効果
プラシーボとは、何の効果もないニセの薬のことです。
しかし、本物の薬だと思ってプラシーボを飲んだ人は、
実際に痛みが減ったり活力が向上したりという効果があることがあります。
痛みやストレス、無気力などに対していい効果をもたらすことがあるそうです。
"ブランド"も究極のプラシーボだといいます。
「美味しいものは高い」のではなく、「高い」だけで美味しく感じてしまうことがあります。
「ブランドのワインを洒落たボトルから注ぐと、安物のボトルから注いだ場合に比べて、美味しいと感じやすくなる」
3.握手の前は手を温めた方がいい
握手の前は手を温めた方がいいといいます。
握手をした手が温かいと「温かい人」という印象を与えることができるそうです。
4.脳は簡単に処理できるものを好む
人は1日に約3万5千回の意思決定をしているといいます。
しかしその95~99%は、自動的な早い思考で処理しているのです。
大量の情報を処理するためです。
だから脳は、簡単に処理できるものを好むといいます。
結果的に、
脳は一目で分かるものに快感を覚え、メッセージがはっきり伝わり、好感を抱くといいます。
5.「なぜなら」と言うだけでうまくいく
脳は「なぜなら」という理由が与えられれば、その中身は何でもよくなるといいます。
この認知バイアスは、ビコーズ・バリデーションと呼ばれます。
「先にコピー機使っていい?だって、コピーしないといけないから」
ただこう言うだけで、譲ってもらえる可能性が高まるといいます。
6.決断を先延ばすより「すぐやる」ほうがいい
決断をいつまでも先送りにするくらいなら、
「後悔してもかまわない」と行動するほうがベターだといいます。
人間は何かを失うことやリスクを取ることを嫌う傾向があります。
「私たちはたいてい後悔を過度に大きく見積もっている」のだといいます。
先延ばしにして状況を悪化させるより、間違えてもいいから決断した方がいい結果になりやすいのです。
7.「皆さんもご存じのように」で権威を高められる
「皆さんもご存じのように」というフレーズで始めると信憑性が高まるのだそうです。
また、自分の同僚を褒めることで、
相手を喜ばせるだけでなく、相手が自分を権威として見てくれるようになるのだといいます。
8.「お金がない」ときに人は頭が悪くなる
「貧困とは誤った選択の結果ではなく、むしろ原因」だといいます。
農業従事者のIQテストを実施したところ、
「収入を得た直後の人は、生活費のことで頭がいっぱいの人よりも懸命な判断を下せた」のです。
多くの研究により、貧困が意思決定能力に悪い影響を及ぼすことが明らかになっているといいます。
9.すぐやる人は「未来時制」を使わない
「未来を遠くに感じさせるような言語を使う人は、将来の自分への関心も低くなる」といいます。
何かを成し遂げようと心に決めるなら、「will」という言葉は使うべきでないのです。
叶えたい目標は現在形で書けと、『非常識な成功法則』でも書かれています。
やはり未来形や〇〇したい、と書くよりも、
「〇〇をする!」「〇〇を達成!」
と現在形で書いたほうが目標を叶える確率は上がるようです。
10.「完璧」よりも「玉に瑕」のほうが好まれる
「広告クリエイターは、完璧すぎないモデルを探す」といいます。
人は出来すぎだと思えるモノや人には惹かれないようです。
むしろ、少しだけヘマをする人物に好感を抱くといいます。
いわゆる「愛されキャラ」の人も、完璧というよりは欠点がある人のことをイメージします。
「この効果は、すでに相手からある程度の尊敬を得ていて、かつヘマをしても専門性に大きなキズがつかない場合に大きくなる」そうです。
ミスを認めたほうが逆に信用されるのですね。
11.ポジティブなフレーミングの効果
病気で600人が死亡すると予測されています。あなたはどちらを選びますか?
A. 200人の命を救える
B. 400人を見殺しにする
どちらも全く同じ内容ですが、Aを選びたくなる人が多いといいます。
ポジティブな側面に目を向けたくなるのが人間だということです。
質問に対する答えの選択は、「内容は同じでも」フレーミングによって変わるのだそうです。
12.交渉を成功させる「逆言法」
「これに1万ユーロも請求するなんてできません」と言ってから、5000ユーロから交渉を始めると成功率が高まるといいます。
給料の交渉では、
「25パーセントアップまでは期待していませんが・・・・」
新しいテレビを買うときは、
「もちろん、30万円のテレビは必要ないけど・・・・」
といったように切り出すと、自分の要求を通しやすくなるというテクニックです。
13.物語をつければガラクタでも売れる
アメリカのオークションサイト「ebay」で、ある実験を行ったといいます。
フリーマーケットで買った平均1.25ドルのガラクタに、プロの作家が物語をつけて販売しました。
「仕入れの合計が197ドルだったガラクタが、総額8000ドルで売れた」そうです。
モノは物語で魅力的になります。
「人間は、生まれつき物語を通して物事を理解するようにできているから」です。
14.チケットを売りたいなら「価格を倍」にする
筆者のティムが広告業界で働いていた時の話です。
「豪華な船旅を売りたい」とクライアントから相談され、
「まず価格を倍にして様子を見ましょう」とアドバイスしたところ、あっという間にチケットが完売したそうです。
15.実力よりも多くの年俸をもらっている選手ほど、懸命にプレーしている
報酬が増えるほど人が頑張るのは、データからも確かなようです。
サッカー選手487人の「適正な年俸」とその選手の「市場価値」を比較したところ、
実力よりも多くの年俸をもらっている選手ほど、懸命にプレーしていることがわかりました。
「実力以上のお金をもらっているのだから、頑張らなければならない」と考えるようです。
まとめ
以上、『勘違いが人を動かす 教養としての行動経済学入門』エヴァ・ファン・デン・ブルック (著)をご紹介しました。
人間は論理で説得されるより「認知バイアス」で行動するということがわかりました。
明日からすぐに使える、ビジネスに使える「認知バイアス」15選を紹介でした。