今日は昨日に続き『プロフェッショナルマネジャー』ハロルド・ジェニーン(著)をご紹介します。
本日はその③として、第七章から終わりまでの中で特にわたしが印象に残った学びを引用します。
それでは今日もよろしくお願いします。
机を見れば人がわかる
第七章「エグゼクティブの机」のなかで、ジェニーンは「机を見れば人がわかる」といいます。
エグゼクティブには二通りある。――机の上がきれいに片づいているエグゼクティブと散らかっているエグゼクティブだ、といいます。
そしてこのように指摘します。引用します。
「多年にわたる私の経験からいって、机の上になにも出ていない、きれいな机の主は、ビジネスの現実から隔離されて、それを他のだれかにかわって運営してもらっているのだ.」
「トップマネジメントに――属する人間にとって、当然なすべき程度と水準の仕事をしながら、同時に机の上をきれいにしておくなど、実際からいって不可能である。」
当時はまだパソコンがないことを考慮しても過激な意見だと思います。
いまでも「机が片付いていないやつは仕事ができない」といったイメージがありますよね。
しかし、ジェニーンはそれを全否定です。
山程のプロジェクトに携わっているトップマネジメントにとって、机がきれいに片付いているのは仕事をしていない証拠だといいます。
「八、九通もの書類が机の上に、さらに10通がすぐそばの床の上に、別にまた八通が後ろの戸棚に載っているといった状態を現出せざるを得ない。」
現代のビジネスマンであれば、パソコンやドライブ上に資料の大半が入っていると思います。
しかし、わたしの場合はよく読まないとならないレポートや図面、数値データなどは印刷して読むことも多いです。
案件に関しての書類を突っ込んだクリアファイルが、案件ごとに5-10個机の右側に山積みされています。
偉い人に、お前は机の上が汚いとよく言われます。
褒められたことではないと思っていましたが、ジェニーンに肯定してもらったようで嬉しいです。
プリントアウトして紙で読んだ方が、頭に入るし線を引いたり補足のメモを取ったり、重要な点をグルグル丸で囲って強調したりと脳に印象付けやすいと思います。
紙で手元に持って会議に臨むと、とっさにコメントや質問をしやすいという効果もあります。
人は失敗から物事を学ぶ
「人は失敗から物事を学ぶのだ。成功からなにかを学ぶことはめったにない。」
「たいていの人は、"失敗"の意味を考える以上の時間をかけて"成功"の意味を考えようとはしない」
これも印象的な言葉でした。
たしかにそうですよね。
自分自身の過去を振り返っても、成功よりも失敗した経験のほうが強く印象に残っています。
思い出す回数も、失敗した経験の方が多いように思います。
自然と「なぜあのときおれはあんなバカなことをしたんだ。今だったら当然こうするのに。」といったことを考えるともなく、考えていたりします。
結果的に似た場面で前よりもより良い行動や選択ができるようになります。
つまり失敗から学んでいるのだと思います。
人は失敗からこそ学ぶ。逆にいえば、成長するためには失敗は避けられない、当然経験しなければならないものなのだと思います。
わたしは今後も失敗することがあると思いますが、その時にこのことばを思い出し、成長のチャンスと考えられると思います。
人生においてある道をとらないことは、別の道をとることと同じくらい重要
「人生においてある道をとらないことは、別の道をとることと同じくらい重要性がある」
ジェニーンはITTの経営者として何百もの買収を振り返った際に、"おこなわなかった買収"に最も満足していると述べています。
1960年代の当時は、汎用コンピュータの技術発達が目覚ましい時代で、コンピュータ開発への投資が一種の流行でした。
各社がこぞって参入する中、ITTは決して手を出さなかったといいます。
結果として、ほかの各社は巨額の損失を出し、ITTは「すくなくとも五億ドルのあり得べき損失をかけずにすますことができた」のです。
ジェニーンは他社の失敗をこう分析します。
「彼らは未来のコンピュータ市場のシェアをつかむ計画を立てることができた。難点はただ、大作戦にはいつもつきもののことだが、他のだれもが彼らと同じものを見、まったく同一の戦略を思いつくことだった」
これは痺れました。たしかにそのとおりです。
盲点でした。これから伸びる市場、世の中を変えるテクノロジーの発明、これは刺激的で印象的でエキサイティングです。
これから爆発的に伸びるコンピュータの市場に参入して「我が社はあんなことができるんじゃないか」「こんな成功ができる」
それはだれでも思いつく、という指摘です。
現在の生成AIブームにも同じことが言えるのではないか、ということをふと思いました。
しかし、ジェニーンの立場でコンピュータに投資しないという判断をするのは簡単なことではありませんでした。
自社にはコンピュータの研究をしたいエンジニアが大勢いましたし、
コンピュータ市場が伸びていくのは明らかであり、他社は続々と参入している、自分たちはそこで戦っていけるだけの巨大企業です。
参入しないほうが難しい状況だといえます。
ここで自分の考えを曲げずに、我慢するということに要諦があるのだと思います。
つまり、「ある道をとらないことは、別の道をとることと同じくらい重要」なのです。
肝に銘じたいと思います。
まとめ
以上、『プロフェッショナルマネジャー』ハロルド・ジェニーン(著)を3回にわたって紹介してきました。
ハロルド・ジェニーンは世界的大企業のトップマネジメントですが、
本書の学びは、一般のビジネスマンにとっても適用できる普遍的な学びが多いように思います。
最後に、ジェニーンがマネジメントとしての心構えとしてのことばを引用して終わります。
「すべての良い企業経営の最も重要かつ本質的な要素は情緒的態度である。」
「マネジメントには目的が、献身がなくてはならず、その献身は情緒的な自己投入でなくてはならぬ」
「『自分はこれをやらなくてはならない』と決めた人間は、いつという時間の見境なくそれに取り組み、満足できる答えが見つかるまで、何度でもやり直すだろう。」
気持として達成しなければならないと、"心で"感じることが必要、ということではないでしょうか。
チームのため、会社のため、社会のため、家族のためとモチベーションは色々あり得ると思いますが、
「おれがこれをやらなくてはならない」理由を持った人が「プロフェッショナルマネージャー」なのではないでしょうか。