今日は、『プロフェッショナルマネジャー』ハロルド・ジェニーン (著)を紹介します。
ハロルド・ジェニーン(1910~1997)はアメリカの経営者です。
1959年にITT(インターナショナル・テレフォン・アンド・テレグラフ・カンパニー)のCEOに就任し、
"14年半連続増益"というアメリカ史上空前の記録を経営者として達成しました。
本書の裏帯には「『経営の鬼神』ハロルド・ジェニーンの金言」、
さらに帯の表紙側には柳井さんの顔写真とともに「これが私の最高の教科書だ」とあります。
駆け出しのビジネスマンから経営者として上り詰めていったジェニーンの実体験を追いながら、
「経営の鬼神」の経営や仕事に対する考え方を学べます。
本書からわたしが特に感銘を受けた点を紹介していきます。
「セオリー」は役に立たないという「セオリー」
まず第1章の冒頭で真っ先に紹介されるのが、下の"セオリーG"です。
セオリーGのGはジェニーンの頭文字。つまり"ジェニーン理論"の意味です。
「セオリーなどでは経営できない。セオリーなどないのだ」。それがジェニーンのセオリーです。
身も蓋もないですね。
ではどうすればいいのでしょうか。
セオリーは役に立たない。
一方で、ハイスクールも出てなくても自分の事業を運営する術を完璧に心得ている人は大勢いる、とジェニーンはいいます。
「そうした人びとは事業とともに生き、事業とともに成長した」「実地によって学習した」のです。
第一章の最後でジェニーンはこういいます。
「ビジネスでも人生でも成功する秘密は、秘密なんかないということだ。なんの秘密もありはしない」
終わりから始めよ
ビジネスにセオリーはない。
そう断ったうえで「三行の経営論」という大原則が紹介されます。
本を読む時は、初めから終わりへと読む。
ビジネスの経営はそれとは逆だ。
終わりから始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをするのだ。
柳井さんも参考にしたゴールを先に決める、いわゆる逆算思考です。
「終わりから始めることのすばらしい点は、それ自体が、その目的に達するためになすべきことを示してくれ始めるところ」
終わりを決めると、そこに対して現状では何が足りないか見えてきます。
1つ目の課題に着手すると、次の課題が見えてきます。
次の課題をパスしても、また別の課題が見えてくるということではないでしょうか。
別の言葉でジェニーンはこうも言っています。
「自分は何をやりたいのかをしっかり見定め、それをやり始めよ」
自分は何がやりたいのかが最も重要なのですね。
「しかし、言うは易く、おこなうは難しだ。肝心なのはおこなうことである。」
おっしゃるとおりです。
金は後回しにして、まずは経験をとれ
「金は後回しにして、まずは経験をとれ」とジェニーンはいいます。
若きジェニーンは働きながら、大学の夜間部に通います。
そこで、フーピンガーナーという名の偉大な教授に出会います。
偉大なフーピンガーナー教授の教えはこうです。
「諸君がビジネスで成功したかったら、・・・(中略)・・・自分が属する場所で上位20%のグループに入ることが必要だ」
自分の職場で上位20%に入ることなら、必死で頑張ればできそうだと思いますよね。
「1番になれ」と言われたら難しいですが、上位20%に入るのは必死で取り組めば現実的です。
では、経験とはなんなのでしょうか。
「単にある職業につき、反復的な仕事をしているだけでは、"経験"にはならない。」
「経験とはなにか新しいことを発見し、学び、能力の成長と蓄積をもたらすプロセス」「それが創造的経験」
「予期しなかったものを獲得した時に得るもの――それが経験」
仕事を初めたばかりの若いうちは、報酬よりも経験を積むことを重視して仕事を選ぶことが大事なのですね。
「自分が選んだ分野でまず経験をつみ、金銭的報酬がそれについてきた」
ジェニーンは、だんだんとそう実感していきます。
一つの職場で経験を積み、次の職場により高い収入でより高いポジションで移ることを繰り返します。
これはわたしも見習いたいと思います。
問題があるところへ行け
ジェニーンは悩んだ末に転職をします。
それも問題があるところへ行け、とジェニーンはいいます。
「適職を見つけたかったら問題があるところへいけ、問題を抱えているか成長の途上にある会社へ行け」
「なぜならそういう場所にこそ最大の昇進のチャンスがあるから」
この教えも現代の我々も採用できる、再現性のある考え方だと思います。
「ひとつの仕事をこなすことができたからには、つぎの、もっと大きな仕事だって、きっとうまくやれるはずだ」
わたしはこの言葉に勇気づけられました。
職業的経歴においてある点を越えると
何度かの天職によるキャリアアップを繰り返し、ジェニーンはついにITTのCEOに就任します。
そのときにフーピンガーナー教授の教えを思い出したそうです。
「職業的経歴においてある点を越えると、金銭的報酬はさして重要ではない」「人はもう一度、仕事が与えてくれる経験へとたち戻る。」
柳井さんや他の経営者の本を読んでいても思うのですが、
上り詰めた方にとって重要なのはお金ではなく「仕事そのものの喜び」になるのではないでしょうか。
そして、以下の名言で今日は終わりたいと思います。
自己の気概を試す挑戦でもあり快事でもあり、
楽しみでも誇りでもあるものへの、
そして骨身を惜しまない勉励のみが提供できる
自己達成の感覚へと回帰するのである
素晴らしい言葉だと思います。
翻訳ですがすばらしい日本語です。声に出して読んでみてください。
「自己達成の感覚」を得ることが仕事をする目的になっていく、そういうのです。
すばらしい理想だと思います。
以上、今日は『プロフェッショナルマネジャー』ハロルド・ジェニーン (著)を紹介しました。
まだまだこの本は始まったばかりです。
明日以降も引き続き、読んで学びを深めたいと思います。